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2004年 08月 17日
作 キムラタツヤ 写真 上田隆勇
ライトハウスでの待ち合わせ九十九日日の朝。マサシはちょっと沖に行こう、と言い、二百メートルほど対岸のサウジアラビアの方へ泳いだ。清姫はマサシの後を平泳ぎや背泳ぎでゆっくりとついていった。今朝は波もなく風もほとんどなく、海の上からみると、視線の向こうにはサウジアラビア、後ろにダハブの町並みが見え、海面があまりにも穏やかなのでまるで湖で泳いでいるようだと清姫は感じた。 「ここら辺なら大丈夫だろう」 そう言ってマサシは履いていた海パンを脱ぎはじめた。 それを見た清姫は、前にマサシが裸で泳ぐと気持ちがいいといっていたのを思い出し、身に着けていたカーキ色の水着を上から順に脱ぎ、脱いだ水着を両手に一つずつ握り、裸になった。この日紅海の水はどこまでも透明だった。清姫は水の中にマサシの体が足の先まで見えた。清姫のしなやかな体もマサシには見えていただろう。二人は顔を見合わせて笑った。 二人の陽に焼けた体は、美しい紅海の海の中で浮力を感じ、水圧を感じていた。清姫は、はじめて感じる微塵のためらいもない開放と一滴の善悪もない抱擁を同時に感じていた。二人の身体には水着の跡の焼け切っていない白い部分が残っていた。 清姫は海の上に大の字になって浮かびながら目の前に広がる空を見、そして目をつぶった。瞳にはしばらく青空が焼き付いていた。次第に波の揺らめきに自分が同化していくように感じた。自分は海の一部になった、と独り微笑んだ。 清姫はマサシの方をそっと見た。同じように海面に漂いながら大の字になり空を見上げているマサシの伸ばした右手が自分のすぐ近くにあることに気付いた。 清姫は仰向けに浮かんだままそっと足で水を掻き、マサシの手の届くところまで海面を移動した。そして左手でマサシの手に触れ、次に腕、そして胸とたどっていった。手はマサシの肉圧を感じた。 そのとき、マサシが清姫の手を引いた。清姫の体はまるで浮き輪のようにほんのわずかな抵抗を感じただけでマサシに引き寄せられていった。マサシは体を起こして裸の清姫を正面から抱いた。清姫の柔らかな乳房の感触を一瞬マサシは自分の胸に感じた。その時清姫はマサシの背中の肌のなめらかさを感じた。 二人はしばらく穏やかな海面に首から上だけを出し、静かに抱き合っていた。二人の周りには、これから数時間の内に地上を支配するだろう今はまだ優しさを含んだ陽の光と、わずかに鳴る風の音、そして海が次第に火照りはじめた二人の体を冷やしてくれる温度だけが存在した。 「綺麗だ」マサシが独り言のように言った。 「海が?サウジが?私が?」清姫はおどけて言った。 「全部」 マサシは少し照れた。そして自分を見て微笑んでいる清姫にキスした。 清姫はマサシを強く抱きしめた。そして浮力を確保するためにゆっくりと水を掻いていた足の動きを止めた。清姫はマサシに身体を任せた。マサシは清姫とともに紅海に身を任せた。そしてしばらくの間、長くしょっぱいキスを何度も繰り返した。 目指せ!ランキング一位 ぜひここをクリックしてください人気blogランキング
by reft229
| 2004-08-17 21:03
| ダハブ物語
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